大学発ベンチャーは、日本経済を再生させる一つの芽である。大学で培われた技術に資本がドッキングしてビジネスとして登場するケースがあちこちで広がっている。だが、大学発ベンチャーには落し穴がある。一つは研究者である教授が自分の研究結果に酔い、マーケットの有無をしっかり確かめようとしないこと。もう一つは、ベンチャーキャピタル側に知識や経験が不足していて、研究を正しく評価できないこと。 結果、予期した成果が上がらず画餅に終わった例も数多くある。そのような落し穴をうまくかわし、順調に羽ばたこうとしている例を二つ紹介してみたい。 東京・千代田区の小川町交差点近く。ごく小さなビルの三階に、「ダイマジック」という会社がある。資本金は二億円。音響の三次元処理技術を誇る企業とだけまず言っておこう。代表権を持つ会長の浜田晴夫氏(四八)は、東京電機大学の教授でもある。大学教授兼経営者の第一号とされている。 現れた浜田氏は、カジュアルな格好の、いかにも活動的な人物だが、徹夜明けのため顔色が少し冴えない。睡眠時間は一日三時間程度の超多忙人間である。 ダイマジック社の音響技術を実際の製品を使って目の前で教えてくれた。テレビ画面に『スター・ウォーズ』が映る。音はテレビの上の弁当箱より少し大きいくらいのスピーカーボックス一台だけから伝わってくるが、完全に立体である。

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