トヨタ自動車の広州(広東省)進出計画が中国の自動車マーケットに大きな衝撃を与えている。トヨタと広州汽車が合弁会社を設立、二〇〇五年をメドに「カムリ」など中型セダンの生産に乗り出す計画。トヨタは昨年十月に天津汽車との合弁で小型車「ヴィオス」の生産を始めたのと前後して、天津汽車を傘下に収めた中国最大の自動車メーカー、第一汽車と包括提携し、「クラウン」級の大型車の合弁生産も計画している。あまりの矢継ぎ早の攻勢が他の外資や日本メーカーの警戒心をかき立てている。 中でも強い衝撃を受けているのは広州汽車と合弁で「アコード」、「オデッセイ」を生産、小型車「フィット」の生産準備を進めているホンダだ。ホンダは華南の中心・広東省をしっかり押さえることで、「華北のトヨタ、華東のフォルクスワーゲン、GMと対抗していく方針」(関係者)といわれていたが、トヨタの広州進出でこのもくろみが崩れるからだ。ホンダが育成してきた広州周辺の部品メーカーを、後から進出してきたトヨタに易々と活用されてしまうという不利もある。 トヨタ全体の中国市場戦略そのものも北部の瀋陽、天津、内陸の成都、南部の広州と面的な広がりが生まれ、残るは上海進出のみとなる。中国市場と言っても天津と広州の間は直線距離で約千九百キロ。札幌―鹿児島間の距離とほぼ等しく、自動車の物流には負担となる。当面は天津、広州の二拠点が異なる車種を生産するとしても、将来的には多品種生産の出来る乗用車工場を南北二カ所に配置する戦略が浮かび上がってくる。二〇一〇年以降で考えれば、中国の自動車市場は年間四百万台規模に拡大する可能性があり、日本市場との逆転も二〇一五年までには起こりそうな気配。トヨタは広州進出で、中国生産を二〇一〇年までに七十万台体制に拡張する方針で、中国市場のトップメーカーの地位をフォルクスワーゲンから奪う可能性も出てきた。

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