駐留米英兵を襲うイラクの3勢力

執筆者:木辺秀行2003年8月号

[ドバイ発]イラクの治安悪化に歯止めがかからない。ブッシュ米大統領が戦闘終結宣言をした五月初めから、襲撃を受けて死亡した米兵の数は三十人以上。その矛先は、米軍だけでなく南部を中心に駐留する英兵や、外国人ジャーナリストにも向けられている。イラク攻略にあっさりと成功した米軍の戦後統治がここまで混乱することを誰が予想しただろうか。「ワシントンがバグダッドと同規模だったとしたら、殺人事件が月に二百十五件発生している計算になる」。舌禍事件の多いラムズフェルド米国防長官のこんな発言が最近、再び物議をかもした。 人口あたりでみた殺人発生件数はバグダッドの方が少なく、イラクの治安悪化報道には誇張があると言いたかったのだろうが、これを痛烈に皮肉ったのが英フィナンシャル・タイムズ紙だった。「確かにバグダッド市民は大量破壊兵器のかけらさえ見つかっていないのだから、安心して眠れるだろう。ラミー(ラムズフェルド国防長官)の説には一理ある」。 だが、この時期イラクの砂漠地帯は気温摂氏五十度を超す。あちらこちらの壁に書きなぐられた「アメリカは出ていけ!」というメッセージを横目に過酷な任務を続ける米兵らにとって、士気を保つのも容易ではない。

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