君よ知るやテロリストの悲しき心

執筆者:徳岡孝夫2003年8月号

 金持ち喧嘩せず。ハシタ金を奪い合う貧乏人の心理は、おっとり構えた富者には分らない。同様に、住むべき安全な家を持つ者には、家なき子の嘆きが理解できない。 憎悪うず巻くパレスチナでは、紛争に割って入ったブッシュ米大統領の示した「ロードマップ」に従い、ガザ地区の流血がしばし熄んだ。貴重な平和の一刻だが、誰もそれが続くとは考えていない。ハマス、イスラム聖戦等は武闘の停止を一時宣言したが、それは条件付き期限付きである。イスラエル軍もガザ北部から撤収したが、いつでもまた入って来る。 中東以外の土地で平和に暮らしている人々は、あの殺し合いをいつまでやる気かと、半ば呆れている。双方とも、一時停戦する分別と度量があるなら、永久停戦のできない理由があろうか。なぜ性懲りもなく不毛の自爆テロを続けるのか? 中東紛争にうんざりしている人々は、ちょっと北アイルランドの先例を見るがいい。IRA(アイルランド共和軍)は、ともかくも銃を置いてテロを捨てた。 それはケルト人のカトリック(アイルランド)とアングロサクソンのプロテスタント(イギリス)の千年近い争いであった。どちらの宗教も愛を説き、世界中に宣教師を送って、悔い改めよ隣人を愛せと教えてきた。宗教戦争はとっくの昔に終わっている。北アイルランドでのみ、テロと弾圧で血を流し合って二十一世紀に及んだ。パレスチナ問題の根源(パレスチナ過激派に言わせれば元凶)であるイスラエルは、建国から五十年ほどしか経たない。

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