貧困層が六〇%を占めるパレスチナ自治地域の経済は、まさに崩壊の危機にある。軍事支出が膨らみ観光収入が激減したイスラエルも、マイナス成長が続いている。国際社会がこの地域の経済浮揚策を真剣に講じなければ、和平実現はあり得ない。 七月二十五日、ブッシュ米大統領はホワイトハウスを初訪問したパレスチナ自治政府のアッバス首相と会談し、イスラエルによるヨルダン川西岸での防御壁の建設について信頼醸成を阻む動きであると述べる一方、同首相を支持していく意向をあらためて強調した。またブッシュ大統領は、米国と自治政府による合同パレスチナ経済開発グループの創設を明らかにすると共に、スノー財務長官及びエヴァンス商務長官を今秋までに現地に派遣して、雇用の創出や成長の回復につながる政策の協議に当らせることを表明している。 しかし、混迷するパレスチナ経済の実態は、米国のテコ入れだけで再生するような単純なものではない。それには米国を初めとする国際社会の支援のみならず、宿敵イスラエルの協力やパレスチナ自身の改革努力が不可欠である。「百日間改革案」は成功するか 一九九三年九月の「暫定自治合意宣言」の後、パレスチナ経済は在外パレスチナ人の自治地域への帰還とそれに伴う資金流入及び中東和平への期待の高まりから一定の成長を維持してきた。特に九七年から九九年にかけてはイスラエルによる経済封鎖が少なく、パレスチナ人労働者のイスラエル国内やイスラエル入植地への出稼ぎも活発であったことから、七%程度の高成長を記録。九六年に二二・八%を記録した失業率は九九年の一一・九%まで低下し、パレスチナ自治地域の貧困層(一日当りの収入が二ドル以下)の比率も九六年の二六・九%から九九年には二〇・二%へと改善した。

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