日本のコメが生きる道

執筆者:足立紀尚2003年9月号

脱・減反政策とFTA交渉が進展したときどうなるか。変化を先取りしたコメ生産・流通の現場を行く。 日本人とコメの関係を揺るがす政治状況が進展している。昨年十二月に政府が打ち出した「米政策改革大綱」と、アジア諸国との自由貿易協定(FTA)の順次締結という外交方針である。今回の米政策改革大綱によって、コメの生産と販売の枠組に大きく改革のメスが入ることがはっきりした。国が作付面積を割り当てる従来のやり方に代わって、新たに設置する第三者機関に生産調整を委ねる方針が打ち出された。 減反に協力しさえすれば農家にカネが入る従来のやり方は、市場で評価されるコメをつくる農家の意欲と努力を削いでいると、かねてより指摘されてきた。だが、減反面積は増え続け、今年度の減反面積は百六万ヘクタール。全国の水田の約四割に相当し、過去最大となった。また、コメの価格も下落の一途をたどっている。かつて三兆円市場と言われたコメ市場も、いまや二兆円を切る規模にまで縮小した。安いものから順に売れてゆくデフレ状況のなかで、ブランド米ともてはやされた銘柄もかつてない水準まで値崩れを起こしている。 ここ数年の豊作続きでコメ余りも深刻だ。日本のコメ生産量九百万トンに対して、今秋の収穫期になっても二百万トンもの次年度持ち越しが見込まれており、なかには一九九七年産のものも含まれている。政府の食糧倉庫に山積みになった古米は古くなった順から飼料として処分されていく。この費用を農家で均等にかぶるという理由から、“計画流通米”のルートで出荷されたコメには、すべての農家から「調整保管」という名目で一俵につき三百円が徴収されてきた。だが、今年六月に成立した改正食糧法では、来春以降はこれまでの“計画流通米”と“計画外米”の区分を廃止し、コメはすべて自由に販売できることが決まった。これに伴い「調整保管」も廃止される見通しだ。

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