IT分野の特許で巻き返しに出る中国

執筆者:吉野祐2003年9月号

 この七月に大連のソフト会社漢普応用技術が、携帯電話大手の米モトローラ、スウェーデンのエリクソンを北京市高級人民法院に上訴し受理された。「漢普が持つ携帯電話向け漢字入力システムの特許を侵害した」というのがその主張だ。モトローラ、エリクソン側は「特許申請の過程で実質的に公開されている周知の技術」と反論。北京市中級人民法院では今年六月に原告の主張を退けたが、これを不服とした原告側が上訴に踏み切った。 過去の外国企業がらみの訴訟では、江蘇省徐州の会社が自社の「千禧龍」という商標を侵害したとして二〇〇〇年にオリンパスを提訴したケースが有名だ。事情に詳しい中国人弁護士は「オリンパスは事前に提携先の香港の特許事務所を通じて調査したが類似商標はなかった」と証言するものの、知的財産をめぐるトラブルでは優位に立ってきた外国企業が提訴されたとあって話題が沸騰。最終的にはオリンパスによる謝罪文の発表と二十五万元(約三百七十五万円)の賠償金支払いで落ち着いたという経緯がある。 モトローラ、エリクソンの件は、商標よりも開発に多くの時間と資金が必要になる特許という知的財産がテーマ。この分野で、外国企業を相手に法廷で争える技術力を持った企業が出てきたことは、注目に値する。

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