欧州のオイルメジャーの間で、対ロシア投資の環境悪化懸念が急速に広がっている。 二月中旬、英BPは六十億ドル以上を投じてロシア国内大手のチュメニ石油会社(TNK)と合弁企業を設立する計画を発表。六月末のプーチン大統領の訪英に合わせて華々しく調印式が行なわれたが、ブラウンBP社長はTNKと設立する新たな石油会社に「政治的な圧力」がかからないよう、プーチン大統領に個人的な保証を求めたとの情報が出ている。 ブラウン社長が「政治的圧力」に言及したと言われるのは、ロシア国内でエネルギー企業への外資の出資を巡り、政治的暗闘が強まっているからだ。プーチン政権内には、一九九〇年代の民営化の過程で切り売りされてきた天然資源などの主要企業で再び国家管理を強め、併せて自らの権力基盤の強化も図ろうと考える「武力派」が一角を占めている。その頭目とされるのが、捜査・治安機関の利益を代表するイワノフ大統領府副長官。彼らの影響下にあるロシア最高検察庁は、ロシア第二位の石油会社ユコスへの捜査を継続中で、七月三日にホドルコフスキー社長の右腕とされるグループ企業のトップを横領容疑で逮捕、これを皮切りに合計八件の捜査に着手している。

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