英国の企業年金で、将来の給付に備えた積立額が大幅に不足する実態が明らかになってきた。高齢化で年金債務は急増しているにもかかわらず、株安で資産が目減りしているからだ。英国では公的年金がほとんど頼りにならないため、「労働者は死ぬまで働くしかない」といった極端な悲観論もささやかれ始めた。 英国産業連盟(CBI)の調べでは、FTSE百種総合株価指数に採用されている大企業は二〇〇二年度に、合計で千億ポンド(約二十兆円)の積立不足を抱えていた。その後株価は回復したが、コンサルティング会社のレーン・クラーク・アンド・ピーコック(LCP)によれば、それでもFTSE百の採用企業の積立不足額は今年七月末で五百五十億ポンドに達するという。 エンジン大手ロールス・ロイス、化学のICI、ブリティッシュ・エアウェイズ、BTグループ……。LCPが積立不足の深刻な企業として挙げたのは、英国を代表する錚々たる顔ぶれ。ほとんどが旧国営企業で、従業員の平均年齢が高いという共通点もある。 ロールス・ロイスの場合は積立不足額が自社の株式時価総額にほぼ匹敵している。会社の資産をすべて時価で売却してようやく不足額の穴埋めができるという状態を意味し、何も残らないことになる株主にとっては見過ごせない問題だ。

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