ネオコンへの反撃を開始した伝統的保守の復活

執筆者:会田弘継2003年10月号

ワシントンから少し距離を置いてみよう。そうすると、隆盛を極めるネオコンとは根本的に異なる「草の根保守」の胎動が聞こえてくる。ブッシュ批判を避けて沈黙してきた伝統的保守が再び口を開き始めた。 この夏、相異なる保守潮流を代表する二人の大物論客のエッセーが、米保守陣営内の激しい対立を浮き彫りにした。アービング・クリストルとジョージ・ウィル。アービング・クリストルは、ワシントンのネオコン(ネオコンサーバティブ、新保守主義者)の総帥とみなされているウィリアム・クリストル(オピニオン誌『ウィークリー・スタンダード』編集長)の父親である。ネオコン興隆史をたどった者ならだれでも、息子のウィリアムではなく父のアービングの方こそ、「ネオコンのゴッドファーザー」と呼ばれる本物の総帥であることを知っている。 一方のウィルは、ワシントン・ポスト紙など米有力紙誌のオピニオン欄で論陣を張り、かつてはニクソン大統領のスピーチライターも務めた、「ネオ」(新)という接頭辞の付かない伝統的保守の大物論客だ。本人は半ば戯れに「トーリー(王党派)」を自認する。 八月中旬、きびすを接するように発表された二人のエッセーは火花を散らすかのごとく、まさに保守陣営内の「思想戦」が剣が峰にあることをうかがわせた。このがっぷり四つに組んだ戦いの今後の帰趨が、来年の米大統領選のブッシュ再選の行方、ひいては保守陣営内だけでなく、米国の将来の姿も変えていくかもしれない。そんな予感を抱かせる論戦であった。

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