イラク戦争の「目的」には納得するも今後の行方については懐疑的、雇用は心配だが財政赤字は気にしない――世論調査はそんなアメリカ国民の意識を映し出す。世論調査の専門家に聞いた。――九・一一後の各種世論調査をまとめたレポートを出されていますが、最初に、世論調査の専門家として現在お感じになっていることをお聞かせ下さい。ボーマン まず言えるのは、九・一一以降、米国民の世界観が一変したということです。自分自身とアメリカに対して抱いていたイメージが変わりました。アメリカがいかに脆弱かに気付き、これまでは気にしていなかったテロリズムを懸念するようになりました。 ブッシュ大統領への支持は圧倒的になりました。その結果、外交政策における政権の自由度は大幅に増えた。ブッシュ大統領の対テロ政策への支持率は、二年後の現在も過半数を超えています。焦点はイラクより経済 イラク戦争について言えば、イギリスとアメリカでは根本的に事情が違います。大量破壊兵器が見つかっていないことでブレア首相は窮地に追い込まれていますが、アメリカでは問題になっていない。というのも、アメリカ国民にとっては一九八〇年代の末からすでにフセインは悪者であり、第一次湾岸戦争は不充分で、フセインはさっさと片付けるべき存在だったからです。一九九六年に世論調査の専門家がこの問題について調べたところ、米国民の意思は「フセイン討つべし」でしたし、湾岸戦争十周年の二〇〇一年にも同様の回答が示されました。ですから、「フセインを倒す」ことが重要なのであって、大量破壊兵器であれ何であれ、他の理由が重要だったわけではないのです。

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