北朝鮮の核化を阻止する「中国の国益」

執筆者:伊藤正2003年10月号

六カ国協議で「調停国」から「当事国」へと立場を移した中国。その背景には南北統一をも見据えた北東アジア秩序への戦略がある。[北京発]八月九日夕、北京の人民大会堂。日中平和友好条約締結二十五周年の祝賀レセプションに先立ち、呉邦国全国人民代表大会常務委員長が橋本龍太郎元首相ら日本側関係者と会見した。会見開始直後、ダークスーツの男が廊下を走ってきた。王毅外務次官だった。王氏は、北朝鮮側との六カ国協議の日程調整を終え、平壌から戻ったばかりだ。会見後、レセプション会場に向かう王氏をつかまえた。「日程は決まりましたか」「今月下旬開催で北朝鮮と合意した。これから関係国と調整する」「具体的な日時は?」「二十五日から月末までの間の三日間」「会場は北京ですね」「そう考えてもらって結構だ」 王次官はこの後、レセプションの席を離れて、一部日本人記者の質問に応じ、協議期間中に米朝や日朝など二国間接触の機会を設けることも明らかにした。六カ国協議は八月二十七―二十九日の三日間、北京で開かれたが、その正式発表(十四日)前に、王氏が北朝鮮との合意内容を漏らしたのには驚いた。それは七月以来、戴秉国外務次官とともに重ねたシャトル外交が実を結んだ安堵のせいだったかもしれない。

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