矢継ぎ早に政策を繰り出してきた「福井日銀」が、今度は目を内に向け、組織改革に乗り出すことになった。組織・人事運営を柔軟化し、変化の速い経済動向に即応するのが狙いだ。職員に対し盛んにアイデアを求める福井俊彦総裁は、組織を活性化してさらにアイデアが湧き出てくる体制を目指す構え。ただ総裁のカリスマ性が強いだけに、組織活性化どころか逆に独裁体制が強まって、“御殿女中”がはびこる恐れもある。 組織活性化それ自体は悪いことではない。人事が停滞した結果、日銀全体に閉塞感が強まっていたからだ。一九九八年の接待汚職事件では、当時副総裁だった福井氏も含め上層部は一掃された。これで若返りが進むかに思われたが、実際には天下りが難しくなったため幹部が滞留、理事人事は入行年次に沿った順送りが繰り返され、昇格を阻まれた中堅ではポスト不足が深刻化した。一方、新卒採用は抑制されたため、現場は恒常的な人手不足に陥った。やりがいのなさから若手エリートが相次ぎ流出する事態も起きており、組織活性化は切望されていたと言える。 日銀組織改革の柱は、本店の課制廃止、年俸制の導入、経営企画室の政策委員会室への統合など。課制廃止はセクショナリズムを排除し、組織横断的な“タスクフォース”を設けて政策立案を柔軟に行なうのが狙いだ。年俸制の導入は能力重視の人材活用を図るためで、中堅・若手でも局長級のポストに就けるように資格階層をフラット化する予定。経営企画室が政策委員会室に統合されるのは、改革を担当する経営企画室を最高意思決定機関である政策委員会と直結することで、改革をより強力に実行していくためだ。

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