米ビッグ3に明暗 快走するGMを追う二社

執筆者:白水徳彦2003年10月号

 米ビッグ3の中国市場における明暗がくっきりしてきた。目立つのは早くから中国自動車メーカーとの合弁生産に取り組んできた最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の躍進と、フォード、ダイムラークライスラーの出遅れだ。 GMは今年の第2四半期にアジア太平洋地域で一億六千三百万ドル(約百九十五億円)の利益を計上した。北米、欧州、中南米に比べ突出した好成績を記録したアジア太平洋の利益の大部分を稼いでいるのが中国市場である。同社は上海汽車との乗用車合弁工場のほか、ミニバンやSUV(スポーツユーティリティ・ビークル)を生産する二つの工場を中国で運営している。成功の背景にはジャック・スミス前会長が一九九〇年代から築いてきた中国政府関係者との緊密な関係があり、中国では独フォルクスワーゲンに次ぐ第二位の外資系自動車メーカーだ。 一方、フォードは約一億ドルを投じて重慶に工場を建設し、今年になって小型乗用車「フィエスタ」の生産を始めたが、その生産量は限られている。来年までに生産量を五万台に、二〇〇五年までには十五万台の生産規模にという計画だが、これまでの販売実績から考えれば計画通り生産規模が拡大できる保証はない。 ダイムラークライスラーも九月上旬、北京汽車とともに合計十一億ドルを投下して両社の合弁会社・北京ジープの工場(現在、ジープブランドおよび三菱ブランドのSUVを生産中)への投資拡大などを発表した。ただし、北京ジープが新たに生産するのはクライスラーブランドではなく、メルセデスのEクラス、Cクラスの乗用車。七〇年代から中国市場に手を付けていたクライスラー(当時、ジープ生産を決めたのは後にクライスラーに吸収されたアメリカンモーターズ)にとって、GMの急激な成長を前にすれば停滞感は否めない。

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