カンボジアでは総選挙が七月末に行なわれたものの、新政権誕生のメドすら立っていない。勝利したフン・セン首相の与党、人民党の連立工作が進んでいないためだが、シアヌーク国王もいら立ちを深めているようだ。 国会は九月末に開会したが、召集役の国王は欠席するという異常事態となった。人民党以外の党がボイコットを宣言したためだ。開会直前になって全党出席の噂が流れ、国王が一時は臨席の準備をするドタバタもあった。 これに先立ち、国王は国会召集を求めるフン・セン首相と人民党に癇癪を爆発させている。国民向けにわざわざ声明を発表、召集要請を「脅迫」と断じ、「フランス植民地主義者、アメリカ帝国主義者、ベトナム侵略者、ポル・ポト派のいずれにも私は恐れをなしたことなどない」と大見得を切ったのだ。 過剰と思える反応の裏には自らの威光の低下への焦りがある。十年前に国王に返り咲いたものの、実権はフン・セン首相に完全に握られ、演じるのは儀礼的な役回りばかり。今回の総選挙ではかつて自ら創設した王党派の政党が大敗したこともあり、イライラは募るばかりのようだ。

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