中国がベトナムに対し、ロシア軍が撤退したカムラン湾の海軍基地の租借を認めるよう働きかけを強めている。ベトナムは、現段階では外国への供与を拒否しているが、米国も基地使用の機会をうかがっており、水面下での駆け引きは激しさを増している。 カムラン湾基地はベトナム海軍の管理下に置かれ、飛行場は改修の上で二〇〇四年から民間機に開放される。リゾート地ニャチャンへの外国人観光客のアクセスが容易となり、基地の一部は経済開発区として運用する方針だ。 ベトナムは冷戦の遺産である同基地を、軍事より経済に生かす意向だが、同じ社会主義国として緊密な関係にある中国の執拗な圧力に苦慮している。 中国は、フィリピンからの米軍撤退、カムラン湾からのロシア軍撤退で生じた軍事的な空白を是が非でも自国が埋め、ベトナムやフィリピンなどと南沙諸島の領有権をめぐる紛争がくすぶる南シナ海に覇権を確立したい考えだ。 カムラン湾は中東からアジアへの石油輸送ルートを直接脅かす位置にあり、ロシア製新鋭艦の導入で増強著しい中国海軍の使用が実現すれば、日本や韓国にとっても安全保障上の大きな脅威となる。

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