イラク石油省で高まる資源ナショナリズム

執筆者:畑中美樹2003年11月号

 バグダッドが陥落した四月九日、ディック・チェイニー米副大統領は「イラク石油省はイラク人によって構成されるが、顧問団として国際アドバイザー達も一定の地位を占めることになる」と語り、これからはアメリカがイラクの石油政策に関与していく意向を示した。実際、連合国暫定当局(CPA)を率いるアメリカは、石油省への政策助言機関として石油諮問委員会を早々に創設。トップにはロイヤル・ダッチ・シェル米国法人元社長のフィリップ・キャロル氏を据えて、石油産業再建の主導を目指してきた。 しかし、ここに来て治安の悪化に加え、またひとつ米国の頭痛の種になりかねない問題が生まれている。CPAとイラク石油省との間で、石油産業の再建や石油開発の推進をめぐる考え方の食い違いが顕在化しているのである。 キャロル委員長は任命二週間後、米ワシントン・ポスト紙(五月十七日付)のインタビューに対し、イラク石油産業再編の方向性を語っている。その内容は、基本線に民営化を置きながらスピードを慎重に調整し、外国資本の活用を図ろうというものだった。「旧制度の維持から完全な民営化まで、あらゆる選択肢が机上に置かれている。ただし、あまりに中央集権化されたモデルは効率的でなく腐敗もしやすい。一方で急進的な民営化も石油産業を一握りの人々の手中に置きかねない」

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