フランス政府は経営危機にある重電・造船大手のアルストムの救済策として、社債引き受けなどで八億ユーロ(約一千億円)の公的資金を投入することで欧州委員会と合意した。民間銀行と合わせて三十二億ユーロという大型支援になった背景には、同社が国策の原子力発電や新幹線(TGV)を手がけているうえ世界で十万人を超す雇用を抱えており、経営破綻はさせられないと判断したためだ。 情報通信のブルやフランステレコムにも融資や増資などの形で資金を投入しているように、フランス政府は経営危機に陥った大手企業はすぐに支援する。ラファラン内閣は民営化を進めている印象を与えているが、実は仏企業には政府の影が常にちらつく。先にゼネラル・エレクトリックに娯楽部門を売却したビベンディ・ユニバーサルでも、経営危機から昨年七月にメシエ会長が辞任した際、エリゼ宮(大統領府)が裏で動くなど国が介入した形跡がある。 企業が傾くと政府が入ってくる構図は、米英型経営が主流になってきても変わらない。それを解くカギは、大手が国営企業だったという歴史だけでなく、経営者と政府との関係にもある。一九九〇年代前半の経営破綻で国有化されたクレディリヨネ銀行のアベレール会長、ビベンディのメシエ会長、そしてアルストムのビルジェル会長。三人ともエリート養成校のENA(国立行政学院)をトップクラスで卒業し、官僚エリートとして時の政府に仕えた後、民間に転出したという共通点を持つ。

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