マレーシアの黄昏

執筆者:名越健郎2003年11月号

 1981年以来マレーシアで長期政権を続けたマハティール首相(77)が遂に10月で引退する。同首相が四半世紀近い治世で最大の成果として挙げたのが、「民族の調和を成し遂げたこと」だった。 マレーシアはマレー系(65%)、中国系(26%)、インド系(8%)などが混在する複合民族国家。マレー人優遇のブミプトラ(土地の子)政策は論議を呼んだが、マレーシアを「イスラム圏最大の先進国」としたのは同首相の功績だろう。 しかし、中国系住民が経済の主導権を握る構図は変わらない。隣国シンガポールは、後継者のアブドラ次期首相の指導力を疑問視し、「民族間のバランスが崩れ、政情不安に陥る恐れがある」とゴー・チョクトン首相は警戒している。 マレーシアの中国系男性の生活。 1人の妻。2人の子供。3つのベッドルーム。4輪車。5倍の給与。 マレー系男性の生活。 5人の子供。4人の妻。3人の妾。2輪車。1ルームの家。 有人宇宙飛行を計画したマハティール首相が、インド系、マレー系、中国系の3人の宇宙飛行士候補を招き、飛行条件を尋ねた。 インド系飛行士が言った。「100万ドルいただきます」「なぜそんなに必要なのか」「インドに親族がいます」

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