環境・安全規制などに対応するための巨額の開発費用負担は各社共通の課題。得意分野に集中的にカネをつぎ込み、不得意分野は必要とあらばライバル企業からでも買う。そのノウハウが勝負を決する要素になった。 九月にアメリカで刊行され話題を集めている『THE END OF DETROIT(デトロイトの終焉)』(Micheline Maynard著)。日本では「二〇一〇年、トヨタの販売台数がGM(ゼネラル・モーターズ)を追い抜き世界一に」という未来予想図ばかりが注目されるが、この書籍の読みどころはむしろ別にある。米ビッグスリーが好業績にあぐらをかく中で、日本勢などが着々と新しい商品企画と技術を育てていった様子だ。 ビッグスリーを軸にして、一九九〇年代後半から始まった業界再編劇のキーワード「四百万台クラブ」も、本来は規模を生かしてコストダウンを図り、巨額の技術開発費をまかなおうというのが眼目だった。「四百万台クラブ」をめざした業界再編そのものは、確かに行き詰まりを見せている。しかし、だからといって技術開発の重要性そのものが薄れたわけではない。 厳しさを増す環境・安全規制などへの対応に巨額の開発費用が必要になるのは、むしろこれからが本番だろう。日本でも二〇〇五年秋から、ガソリンエンジン車を対象に、現在よりも基準が二倍厳しい新しい排ガス規制が導入される方向だ。ディーゼルエンジン車への環境規制も強化されている。優れた環境対策技術を持たなければ、自動車そのものを売れなくなりかねない。GMやトヨタなど巨大企業グループですら、こうした新技術をすべて自社で開発し続けることは難しいと見られている。

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