事務次官にまで上りつめた官僚エリートは、なぜ自らの人生を否定するような行動に走ったのか。それは、旧竹下派との確執、政権交代による官僚主導行政の高まり、本人の政治的野心など、いくつかの要素が組み合わさった結果だった……。「何を考えているのか、さっぱり分からん。およそ役人のすることではない」 藤井治芳・日本道路公団総裁の解任に向けた「聴聞」が実施された直後、旧建設省のある幹部OBは、苦々しげにこう漏らした。 特殊法人のトップが任命権者である所管大臣の辞職勧告を拒否。当事者の言い分を聞く「聴聞」で自己の正当性を延々と主張した挙げ句、解任される。これだけでも霞が関のお役人にとっては驚天動地なのに、藤井は解任処分の無効を求める行政訴訟や、自分を誹謗した石原伸晃国土交通相、安倍晋三自民党幹事長を名誉棄損で訴える構えまで見せている。また、石原国交相に対し複数の政治家の名前を挙げ、道路行政をめぐる疑惑があったと示唆。解任後にその内容の暴露も辞さないとするなど、およそキャリア官僚とは思えない行動を取り続けている。 藤井は聴聞で「与党が衆院選を有利にするため、自分を理由なく敵役、生贄にしようとしている」と、今回の解任劇は政治的なパフォーマンスであり、自分はその犠牲者だと主張した。マスコミの一部にも、これを「政」対「官」の戦い、つまり永田町と霞が関の主導権争いの一環だと見る向きがある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。