なぜ北に救命ブイを投げるのか

執筆者:2003年12月号

 われわれは北朝鮮にどう立ち向かおうとしているのだろうか。何をしろと北朝鮮に迫っているのかが、わかるようでいてわからない。決まっているじゃないか、拉致問題の解決だよ、と言いたい人の気持ちはわかるが、北朝鮮を囲むラウンドテーブルでそういうことを主張しているのは日本だけである。五百人近く拉致されていると伝えられる韓国は、拉致問題を持ち出さない。 そればかりか、韓国では日本の拉致に関する報道もほとんど無視に近い状態だ。誤解してほしくないので繰り返すが、拉致問題が大事じゃないとか、引っ込めろと言っているのではない。もっと本質的な視点で北朝鮮を見る必要がある、遠いようでもそれが結局は拉致問題の早期解決にもつながるのではないかということを言いたいのだ。 大量破壊兵器を持っていない、というイラクに対し、「いや隠しているはずだ」と戦争をしかけた米国は、不思議なことに「核という大量破壊兵器を保有している」と主張する北朝鮮には「持っていないはずだ」と対話路線で解決の糸口を見つけようとする。韓国と日本に合計八万人近い米兵がおり、まして中国やロシアという大国がそばにある朝鮮半島で、米国が戦争をしたくないと思っていることがイラクとの対比でよく理解できる。

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