病院の建て替えだけで今後五年間に四兆円。最後の巨大市場を巡る動きはすでに始まっている。「最後の巨大市場」――。金融・証券関係者が口を揃えて語り、熱い視線を注いでいる分野がある。病院や学校の直接金融への参入だ。銀行融資に依存していた医療・学校法人が債券を発行し、成長に必要な資金を調達する動きが徐々に顕在化。病院の財務格付けなど必要な市場インフラも整備されつつある。「非営利」の建て前で、市場原理に反発してきた病院や学校が、遅ればせながら自ら資本の論理に身を投じ始めた。 九月十二日、「病院格付けと資金調達の新手法」と題したセミナーが都内で開かれた。テーマは病院債と格付け。百人を超える出席者のうち医療関係者は四割に過ぎず、六割を金融・証券業界関係者が占めた。格付会社が評価するのは医師のウデではなく債務の返済確実性だが、病院経営者の間では「医療の質よりも金儲けの巧拙に左右されがち」と、必ずしも歓迎されていない。川渕孝一東京医科歯科大教授が医療界のこうした不信感を代弁すると、外資系格付会社のアナリストが「長期的に見れば医療の質の悪い病院は財務内容も良くない」と反論するなど、医療業界と金融業界の温度差が際立った。

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