[サンパウロ発]南米のボリビアで九月から続いていた先住民らによる反政府運動は十月十七日、ゴンサロ・サンチェス大統領の辞任という結末を迎えた。親米派のサンチェス氏は、混血も含めて全人口の八割を超える先住民系からの受けが当初から悪かった。そこに天然ガスの輸出問題が浮上して対立は深刻化した。一つの政権を打倒するまでに昂揚した資源ナショナリズムと、外資主導にならざるを得ない資源開発。ボリビアの政変は途上国に共通するジレンマを露呈した。 アンデス山脈が国土を貫く内陸国・ボリビアは亜鉛など地下資源に富み、天然ガスの確認埋蔵量は五十五TCF(兆立方フィート)、未確認のものも合わせれば百五十TCFと、ベネズエラに並ぶ資源大国だ。一九九九年から国境を接するブラジルにパイプラインを通じた天然ガス輸出を開始した。 ガス輸出そのものはすでに始まっているにもかかわらず、今回改めて問題となったのはなぜなのか。カギは米国やチリに対する国民感情だ。英ブリティッシュ・ガス、スペイン系のレプソルYPFを中心とするコンソーシアム「パシフィックLNG」は二〇〇七年に液化天然ガス(LNG)を輸出する計画を進めているが、その主な供給先が米国だ。さらに、パシフィックLNGは技術的な理由から積み出し港をペルーでなくチリに設置するよう要求。サンチェス政権がこれに応じる姿勢をみせたことから、反対運動に火が点いた。

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