予定表にのらない事態が「意味」を決める

執筆者:田中明彦2004年1月号

 将来を完璧に予測することは不可能である。ただ、人間は全く何の計画もたてずに行動しているわけではないから、あらかじめ決まっているスケジュールを眺めることで、だいたい何がおこるかを知ることができる。 その際に注意しなければならないのは、それぞれの予定の持つ「意味」である。たとえば、毎年六月ころには主要国首脳会議があるし、二〇〇四年のような年には四年に一度の出来事として、春にロシアで大統領選挙、台湾で総統選挙があるし、十一月にはアメリカ大統領選挙がある。 とりわけアメリカの大統領選挙については、新年早々から選挙戦の動向が注目を集めるのが常である。しかし、一体何が争点になるのかは、カレンダーを眺めているだけではよく分からない。なぜなら、予定されている出来事の「意味」を決めるのは、実は「予定」できないさまざまな事態の連鎖だからである。 それでは、予定できない出来事のうち、二〇〇四年に重要なものは何だろうか。第一にあげなければならないのは、イラク情勢の展開をふくむ「対テロ戦争」の帰趨である。イラク情勢の展開も、イラク国内の動向に着目するだけでなく、九・一一以後、世界大で行なわれている「対テロ戦争」という「世界戦争」の文脈に照らして考えなければならないと思う。

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