二〇〇四年三月のロシア大統領選の前にクーデター事件が起こる可能性を、クレムリンに近い筋が囁き始めた。石油会社ユコスへの“介入”とそのホドルコフスキー社長の逮捕など、新興財閥への攻撃が激しいプーチン政権に対し、オリガルヒ(新興財閥)が連帯して立ち上がるというのだ。 といっても、単純な軍事クーデターではない。クレムリンが警戒するシナリオは、エネルギー産業を手中にするオリガルヒがエネルギー危機を演出することだ。モスクワではなくボルガ、シベリア、極東といった地方で電力危機などを起こし、大衆の不満に火をつける。資金援助を行なって反政府運動をモスクワやサンクトペテルブルクにまで飛び火させるという、グルジアの「ビロード革命」と似た手法だ。 もし現実化すれば、大衆行動には共産党、右派連合、ヤブロコなどの野党政党も加わると見られる。ホドルコフスキー氏を収監中のマトロスカヤティシュナ刑務所に押し寄せて、同氏を解放する計画も練られているという。 情報筋は、タタルスタン、バシコルトスタン、カルムイキア各共和国の大統領、さらにはボルガ地域のいくつかの州の知事らも、この動きに乗る可能性があり、現実離れしているようでも軽視できないと語っている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。