江沢民は「新幹線」支持派だった――。 中国の北京と上海を結ぶ高速鉄道の導入が迷走している背景には、嫌日姿勢を鮮明にしながらも新幹線の技術力は評価していた江沢民党中央軍事委主席自身の相反する感情があったようだ。 先に温家宝首相が高速鉄道技術導入では公開入札を実施すると宣言したのも、江の迷走を断ち切り、現指導部のひとり立ちをアピールする狙いがあるという。 現在、党中央指導部の新幹線支持派は、江のほか黄菊、曾培炎両副首相ら。一方、ドイツのリニアモーターカーを支持するのは温家宝首相、徐冠華科学技術相ら。 ドイツは、そんな中国指導部の亀裂を巧みに利用している。かねて朱鎔基前首相に食いこみ、上海市内向けにはリニアを売りこんだが、その後、リニア不利と見るやICE(超高速鉄道)もアピールし始めた。 同時に北京のドイツ大使館を司令塔に中国国内の反日分子に新幹線欠陥情報などと若干の資金を提供し、新幹線導入反対の世論を盛り上げた。「ネットにおける新幹線反対署名運動の黒幕はドイツ政府だ」と中国筋は断言する。 高速鉄道導入は、二〇〇四年前半には決着がつくとみられているが、迷走の代価は大きい。党中央の一部には「二〇〇八年の北京オリンピックまでに開通させる必要があるのか」との声まで出ている。当面、杭州―上海―南京、天津―北京の二区間にそれぞれリニア方式と新幹線方式を試験的に導入するという折衷案も検討課題に上っているようだ。

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