ザ・クラス・オブ・1986

執筆者:梅田望夫2004年1月号

「シリコンバレーは復活するぞ」 ネットバブルが崩れ始めた二〇〇〇年四月から数えて約三年半、やっと今、自信を持ってこう言うことができそうだ。苦しく厳しい調整があると、やはり経済に減りと張りが出る。シリコンバレーを生み育ててきた長老たちは皆、ネットバブル崩壊に接し、おたおたする若い世代を横目に「歴史は繰り返す」と泰然自若としていた。老人たちが正しかったのである。 情報技術(IT)産業の約五十年の歴史において、地殻変動ともいうべき大技術変化が二つあった。第一はPC、第二はインターネットである。新しく生まれる技術の社会に及ぼすインパクトが大きすぎる場合、最初は期待ばかりが盛り上がる。しかし産業・社会全体におけるその技術の本当の意味がわかるには、少なくとも十年という歳月をかけての試行錯誤が必要となる。その過程で、過剰な期待とその期待には容易には応えられない現実とのギャップが生まれるゆえ、バブルが生成されて崩壊するのである。 一九七〇年代末から八〇年代初めにかけて盛り上がったPCバブルが一九八三年に崩壊した過程のあれこれを、長老たちは自らの経験として記憶していた。泡沫PCメーカー等の株式公開が相次ぎ、その直後にPC関連株が半値以下に下落したのが八三年。新興勢力がその調整で苦しむさなか、旧勢力の巨人・IBMの従業員数が四十万人を超えて「我が世の春」を謳歌していたのが翌八四年のことである(旧勢力が瓦解した「一九九一年IBM赤字転落」までにはまだ七年の歳月を必要とする)。

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