平気で本格回復を唱える人達

執筆者:小田博利2004年1月号

日本はいま、戦後最大の変化を経験している。「国体」を変えかねない自衛隊派遣、地方には金融危機の火が上がっている。ここから目をそらすことの偽善を知れ――。 二〇〇三年末の株式市場で仕手株が乱舞している。破綻した足利銀行の持ち株会社で、東証の監理ポストのなかにある「あしぎんフィナンシャルグループ」だ。連日、数億株の売買が繰り返され、東証全体の株式売買高の四割を占める日もある。 インターネット取引を舞台にした個人投資家のマネーゲームには違いないが、二〇〇三年一月に導入された「新証券税制」を悪用した脱税まがいの取引が目立っている。脱税まがいの取引は、みなし取得価格の制度を利用する。自分の家にしまったままになっているタンス株券の取得価格が分からなくなってしまった場合に、一律に二〇〇一年十月一日時点の株価の八〇%を取得価格として扱う――というのが、みなし取得価格。 あしぎんフィナンシャルの場合、九十六円が取得価格になる。連日の大商いとはいえ、あしぎんフィナンシャルの株価は十二月上旬段階では十円台。投資家があしぎんフィナンシャル株をこの株価でいったん取得した後、売却する際に「購入価格はみなし取得である九十六円だった」と偽ったらどうなるか。帳簿上は大幅な損失を計上した形になる。

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