「大手銀には厳しく、地銀には甘く」は過去の話。足銀国有化は不良債権処理の最終章の幕開けだ。 金融検査と財務会計基準にダブルスタンダードはない。足利銀行の破綻処理は地銀経営者の甘い認識を打ち砕いた。竹中平蔵金融相は就任以来、不良債権問題の元凶は大手銀行と問題企業大手三十社と位置付け、大手行に厳しい経営改善を迫ってきた。その一方で、地域活性化に重点を置いた「リレーションシップバンキング」の概念を打ち出すなど地銀には甘いと思われていたが、それは幻想に過ぎなかった。竹中金融庁が大手行叩きに奔走してきた一年間という時間は、地銀に与えられた最後の猶予期間だったことになる。「そう遠からず検査が入るだろう。深掘りされても大丈夫なように十分な資本を用意しておいて欲しい」――。金融庁は二〇〇三年八月、公的資金を投入した銀行が経営健全化計画で示した収益目標を達成できなかったとして業務改善命令を発動した。その際に金融庁は足利銀の日向野善明頭取を密かに呼び出し、年内に立ち入りが予定される検査が厳しいものになることを告げた。 その言葉は、金融再生プログラムやりそな処理でスタンダードとなった会計基準や収益還元法などの資産査定を地銀に初めて適用することを示唆していた。みずほフィナンシャルグループが金融検査の結果、二〇〇三年三月期に二兆円の最終損失と一兆円の増資を余儀なくされた例を出すまでもなく、検査は常に不良債権の追加処理を迫ってきた。

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