オリガルヒに冬の時代

執筆者:名越健郎2004年1月号

 米国式の経営手法を導入し、個人資産推定80億ドルとロシアで1番の大富豪になったミハイル・ホドルコフスキー・ユコス社長(40)が10月末、脱税などの容疑で逮捕された。 専用機がノボシビルスクに着陸した際、重武装した連邦保安局(FSB)の一団が銃を突きつけて連行。数日後、FSBは12歳になるホドルコフスキー氏の娘の学校に乗り込み、娘に同級生の名簿などを提出させたという。 FSBは泣く子も黙る旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関。1930年代のスターリン粛清を彷彿とさせる逮捕劇は、ロシアがいつか来た道をたどっている印象を与えた。 現在のクレムリンは、プーチン大統領はじめ、KGBの中堅将校出身者が固める「KGB政権」(コメルサント紙)。その矛先はオリガルヒと呼ばれる新興資本家に向けられており、エリツィン時代にわが世の春を謳歌したオリガルヒは、厳しい冬の時代に入った。 1996年、クレムリン。 大統領の秘書官がエリツィン大統領に報告した。「ベレゾフスキー、グシンスキー、チュバイス様がお見えです」「執務室に入ってもらえ」 2003年、クレムリン。 大統領の秘書官がプーチン大統領に報告した。「ホドルコフスキー、アブラモビッチ、チュバイス様がお見えです」

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。