「ならず者国家」リビアが、大量破壊兵器廃棄を宣言し、世界を驚かせた。この動きの背後には、中東諸国いずれもが直面する政治システムの危機がある。イラク戦争後、米国との対立を深める中東に日本はどう対応すべきなのか。 ヨルダンの首都アンマン滞在中に「サダム・フセイン拘束」を知った。このビッグ・ニュースにどう反応するか興味深かったが、町は予想外に静かだった。パレスチナ難民キャンプではフセイン支持のデモがあったようだが、ヨルダン大学前のカフェに集まっていた学生たちは特別な感慨はないといった感じでおしゃべりに興じていた。この冷たく距離を置いた反応は何を意味しているのだろうか。中東の一般大衆はもうとうにフセイン体制に代表される中東の統治システムに見切りをつけていたのかもしれない。 現在の中東の国家システムが誕生したのは第二次世界大戦前後である。それから半世紀以上がたった現在、中東の統治機構は制度疲労を起こし、各国は正統性の危機に直面している。リビアが突然、大量破壊兵器廃棄を宣言したのも、「反米」や「革命」では支配が立ち行かなくなったからだ。保守的なサウジアラビアでさえ選挙制度の導入が語られ始めている。危機の背景にあるのは、経済の低迷と人口爆発、支配体制の強権的な性格であり、加えて高まる一方の反米感情が各政権の足元を揺るがしている。中東と米国の関係がいっそう対立的になる中、その間で日本はどう対応すべきなのか。

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