タイのタクシン首相にとって、二〇〇五年二月の次期総選挙を控え、今年は就任一期目の総仕上げの年。その出端を挫くように年初から南部のパッタニー、ヤラ、ナラティワートの三県で軍の施設や学校などに対する襲撃・爆弾テロ事件が頻発している。 マレーシア国境に近く、タイのイスラム人口が集中する南部三県は古くから分離独立運動が盛んで、「パッタニー統一解放機構(PULO)」などが反政府活動を推進。海外のイスラム勢力から活動資金が流れ込んできた模様だ。 今回の事件についてタイ政府は、アル・カエダと関連があるとされる東南アジアのテロ組織「ジェマー・イスラミア(JI)」の関与の可能性が出てきたとして、南部三県に戒厳令を布告。有力情報の提供者には百万バーツ(約二百八十万円)の報奨金を出すと発表するとともに、マレーシア治安当局と協力して両国国境付近の警戒を強化している。 南部三県ではマレーシアとの国境も小川などがあるだけで、不法越境は容易な状況。タイ国内で破壊活動に及んだ後に犯行グループがマレーシア側に逃走・潜伏している可能性もあることから、タイ政府はスラキアット外相をマレーシアに派遣するなど迅速な対応をみせている。

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