フランス、ドイツ、イタリア。欧州各国ではメディアの寡占が進んでいる。しかも、これらのメディア企業はオーナー支配で、経営権も同族の手中に握られたままだ。各国のメディア戦略も絡んでくるだけに、政治との距離も微妙な問題をはらみ始めた――。 二〇〇三年十二月三日、フランスの複合企業体ラガルデールは、欧州委員会との間でビベンディ・ユニバーサルの出版部門エディティスの買収を巡る合意に達した。同社は〇二年に十三億ユーロでエディティス買収に合意していたが、欧州委が「出版の独占につながる」として待ったをかけていた。一年以上かかった交渉の結果、エディティスの売上の六割に相当する出版社を手放すことで、ラガルデールは欧州委の承認を得た。 アルノー・ラガルデール会長(四二)にとっては苦い経験だったに違いない。父のジャンリュック・ラガルデール前会長が〇三年三月に突然死去して急遽、会長に就任して以来、結果が問われる最大の懸案だったのに、株主の満足が得られるものではなかったからだ。ラガルデールはこの買収により、アナヤ、ラルース、アルマン・コランなどを傘下に収めるが、辞書で知られるロベールやナタン、プロンなどの有名出版社は手放さなければならない。

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