世界貿易機関(WTO)加盟から三年目に入った中国は今年、「外資一〇〇%企業への輸出入権付与」、「外資銀行への中国企業向け人民元業務の開放」という産業、金融両分野での公約実現を義務づけられている。これまでで最も深刻な影響が出かねないもので、逆に言えば、外資企業にとっては大きなチャンスだ。 これを受け、まず動いたのは大手商社。このところ中国ビジネスで収益トップ級に躍り出た三井物産は昨年末、江蘇省蘇州市に輸出入権を持つ総合貿易物流会社「蘇州三井国際物流貿易公司」の設立を申請した。形のうえでは物産と蘇州市側の折半出資だが、蘇州市は経営に関与しないことを条件にしており、実質的には物産の一〇〇%出資会社といってよい。蘇州は蘇州工業園区、蘇州新区の中国有数の二大開発区を持ち、キヤノン、エプソン、松下電器産業はじめ日本企業だけで計百数十社の製造業が進出。そうした進出企業への部品、原料の輸入や製品輸出を掌握しようという狙いだ。メーカー側にすれば通関手続きや物流、貿易決済の手間から解放される利点がある。 中央政府は当初、去る十二月末までに三井物産に認可を与える予定だったが、商務部の一部などに反対する勢力があり遅れている。従来、日本企業向け貿易取引で名義貸し、通関手続きなどによって事実上の「眠り口銭」を稼いでいた中国企業に打撃となる上、外資が直接輸出入業務にあたれば地場の部品よりも輸入部品を優先調達する、と疑っているからだ。とはいえ、外資への貿易権付与は「加盟後三年以内」と規定されており、今年中には必ず実現しなければならない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。