中・韓・日が延命させる金正日政権

執筆者:黒田勝弘2004年2月号

「五年崩壊説」もソウルで流れる北の独裁政権だが、国際社会がいまの「甘やかし」を続ければ、問題はいつまでも解決しない。[ソウル発]「金正日政権はあと五年でつぶれる」という話がソウルにある。理由は同じ(?)ような日本を舞台にした朝鮮半島の南北による政治的な「拉致事件」の類推からきている。というのも金大中拉致事件(一九七三年)を引き起こした韓国の朴正熙政権(一九六一―七九年)は、金大中拉致事件に対する国際社会の執拗な非難と圧力を受け、事件から六年後に崩壊しているからだ。 金正日政権崩壊はなぜ六年後ではなく五年後かというと、日本人拉致事件を認めた二〇〇二年からすでに一年経っているからだ。日本を舞台にした拉致事件は、朝鮮半島の政権にとっては鬼門(?)というわけだ。 さらにいえば、当時の韓国の朴正熙政権は強権的な長期政権ではあったが、「漢江の奇跡」といわれたように経済発展には成功し、国民の暮らしを豊かにした。それに比べると北朝鮮の金正日政権は、経済はますます疲弊し人民は飢えている。だから「こちらは五年といわずもっと早いかもしれない」というオチがつくのである。 ただ、この話には若干の留保もつく。双方同じような「拉致事件」ながら、事件をきっかけにした政権に対する内外の圧力に違いがあるからだ。

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