映画『アドルフの画集』(原題は“MAX”)が二月上旬に日本で公開される。スティーブン・スピルバーグ監督の『カラーパープル』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたことで知られる脚本家メノ・メイエス氏は、この作品が監督デビュー作となる。 舞台は、第一次大戦の爪跡が色濃く残る一九一八年から一九年にかけてのミュンヘン。画家志望の青年アドルフ・ヒトラーの姿が、架空のユダヤ人画商マックス・ロスマンとの関係を通して描かれる。このメイエス氏による史実とフィクションを大胆に織り交ぜた脚本は、「ホロコーストを引き起こした“怪物”ヒトラーに人間性を見出そうとする、受け入れがたいアイディアだ」と見なされ、資金集めなど、その製作は困難を極めた。ナチに迫害された家系出身のハンガリー人プロデューサー、アンドラス・ハモリも「映画化は不可能」と判断し、一度は申し出を断わったという。 なぜ、これほどタブー視されるテーマをあえて映画化しようとしたのか。「ナチの建築家アルベルト・シュペーアの“ヒトラーが芸術家だったことをまず知るべきだ”という言葉に触発されました。実際に彼の絵を見てみると、そこには才能のない画家ゆえのただならぬ野望が溢れかえっていた。ああ、このエネルギーが、絵画という表現手段から飛び出したとき、政治に向かい、“第三帝国”創設に至らせたのだと思ったのです。そこで、画家志望だった頃の、独裁者になる前のヒトラーを描くことで、その心の闇の根源に迫れるのではないかと思いました」

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。