ベルギー王室の「日常」を見て

執筆者:大野ゆり子2004年2月号

 先日、ベルギーのテレビでマチルド皇太子妃殿下のドキュメンタリーを放映していた。ベルギーのテレビ各局が時間をかけて丁寧に取材した共同製作だそうで、ご公務の内容を通して、国民と共に歩もうとするベルギー王室の考え方が視聴者に伝わってくる、良質の番組であった。ちょうど放映の数日前に、フィリップ皇太子殿下とマチルド妃殿下が夫の指揮した公演をご観劇になり、終演後に日本の皇室とのゆかりの深さなどを伺ったばかりだったので興味深く拝見した。 印象的だったのは、なかなか一般の者には触れる機会のないご公務というものが、いかにハードスケジュールであるかということである。「家族とのプライベートな時間が、公務への活力源です」と妃殿下はインタビューで語られたが、ご公務以外のプライバシーが徹底して守られ、ゆったりと過ごされているのにも驚いた。街中でお食事されても、あまりに普通でマスコミも追いかけない。「仲良いねえ」と話しかけるお爺さんが一人いた以外は邪魔する人もいない。 雅子妃殿下がしばらくご静養されるという記事を新聞で読んだが、国の規模などを考えると、日本の皇室の方々のご公務というのは、より一層、多岐にわたる激務ではないかと想像する。たまたま筆者は小・中学校時代の同窓生とはいっても、お目にかかる機会は限られているが、その中でご公務に対する細やかな配慮を垣間見たことがある。

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