「団結」を誇示し始めたクルド人社会

執筆者:村上大介2004年3月号

[カイロ発]今年夏の米占領当局からイラク側への「主権移譲」プロセスの中で、クルド人勢力が連邦制を要求する声をさらに強めそうな情勢となってきた。二月一日に北部のクルド人地域アルビルで起きたクルド二大政党の事務所を狙った同時テロの結果、クルド人社会の中に「分離・独立」志向の声が高まりかねないからだ。連邦制が「イラク分割」につながることを懸念する国内の他宗派や周辺諸国の手前、露骨な動きを控えてきたクルド人指導者たちの政治的配慮も吹き飛ばされかねない。 テロは、イスラム教の二大祭の一つ、イードルアドハー(犠牲祭)初日に起きた。クルドの「首都」といってもよいアルビルにある二大組織、クルド民主党(KDP、マスード・バルザニ議長)、クルド愛国同盟(PUK、ジャラル・タラバニ議長)の事務所で、クルド人とアラブ人の男がそれぞれ自爆。集まっていた百人以上が死亡する戦後イラクでも最大規模の犠牲者を出した。 クルド人勢力や米占領当局は、イラクで活動しているとされる国際テロ組織アルカーイダか、その関連組織の仕業との見方を示したが、その後、アンサール・アルスンニと名乗る正体不明の団体が犯行声明を出している。背後関係の真相は不明のままだ。

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