フセインの穴倉

執筆者:名越健郎2004年3月号

「お前は誰だ」「わたしはイラク共和国大統領だ。あなた達と交渉する用意がある」「ブッシュ大統領からよろしくとのことだった」 昨年12月13日、サダム・フセイン元イラク大統領がティクリート近郊の穴倉で拘束された際、米軍兵士と元大統領の間でこんなやりとりがあったとする米軍の発表は、あまりにできすぎているが、フセイン氏拘束で「悪の枢軸」や「テロ支援国」が追い詰められたことは確かだ。 イランは国際原子力機関(IAEA)の特別査察を受け入れ、リビアは大量破壊兵器の放棄を決め、北朝鮮も歩み寄り6カ国協議が2月25日に開催されることになった。ブッシュ政権の力の外交・軍事政策がポイントを稼いだ格好だ。 問「フセイン元大統領拘束を望まなかった外国人は誰か」 答「北朝鮮の金正日総書記とリビアのカダフィ大佐だ」 問「フセイン元大統領拘束を望まなかった米国人は誰か」 答「民主党の大統領候補たちだ」 ホワイトハウスはブッシュ大統領がフセイン元大統領拘束のニュースを伝えられた時、キャンプデービッドの大統領山荘で本を読んでいたと発表した。 これを聞いた米国人がコメントした。「フセイン拘束より、大統領が読書をしていたことが驚きだ」

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