スペインで三月十一日に起きたマドリード鉄道同時爆破は、二百人の死者を出したうえ、十四日に行なわれた総選挙で、親米右派の与党国民党にまさかの完敗をもたらした。「三月の四日間」は国際的にも重要な意味をもつが、スペイン独特の問題をも浮かび上がらせた。 事態の国際的な意味については、重要な要素を三つあげたい。まず爆破の実行犯がアル・カエダの可能性が高いことである。モロッコ人ら容疑者五人が逮捕され、アル・カエダ幹部の犯行声明を録画したビデオも発見された。アル・カエダだとすれば、二〇〇一年九月の米同時テロ以来、アル・カエダ系組織が西側で起こした初の大規模殺傷事件となる。バリ島やカサブランカのテロとは違い、「西洋」を直撃するテロである。これが米大統領選にも影響することは間違いない。 もう一つ重大なのはイラク情勢への影響だ。犯行声明も対米協力を非難しているが、スペインは、イラクに千三百人の兵員を送り込むなど、一貫してブッシュ政権と歩調をそろえてきた。昨年二月、国連安保理決議を経て開戦しようとした米英に寄り添い、非常任理事国として唯一、いわば“開戦のための決議案”の共同提案国になったのもスペインだ。同じ親米でも、非常任理事国でもなかったイタリアや日本の対米協調とは目立ち方が違う。その意味で、スペイン「懲罰」は大きな象徴的効果を持つ。

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