自民党郵政族の動き、総務省と財務省の対立、そして肝心の首相自身のあいまいな態度。「郵政民営化」という言葉がひとり歩きする背後で、実質的な内容が骨抜きにされかねない兆候があちこちで見え始めた。「郵政事業を二〇〇七年四月から民営化するとの政府の基本方針を踏まえ、日本郵政公社の経営改革の状況を見つつ、国民的論議を行い、〇四年秋ごろまでに結論を得る」――。昨年十一月の衆院選に向けて小泉純一郎首相が掲げた政権公約。首相が「構造改革の本丸」と意気込む郵政改革は、この玉虫色の文言から想像される通りの展開を見せ始めている。 道路四公団の民営化法案が「抵抗勢力」への露骨な妥協の中で決着した後、郵政民営化は首相にとって、政権の唯一最後の金看板だ。だが、反対論が渦巻く自民党内では「郵政事業改革に関する特命委員会」(村井仁委員長)が発足し、首相包囲網が着々と作られつつある。お膝元の政府内では、郵政公社を所管する総務省と、内閣府や財務省との主導権争いが激化している。約三百五十兆円の資金と職員二十八万人を誇る巨大な官業の郵政公社も、民営化という目標を逆手にとって業務拡大に邁進中だ。 郵政民営化論議は、首相が自ら議長を務める「経済財政諮問会議」が今秋に取りまとめる最終方針に向け、そろりと動き出したが、雲行きが怪しくなってきた。名をとって実をとらない「道路公団改革の二の舞」となる公算が強まっているのだ。

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