企業内発明裁判 巨額判決に潜む問題

執筆者:矢吹信2004年4月号

 従業員の発明の値段を巡る判決が立て続けに下されている。一月二十九日、東京高裁が光ディスク関連特許の日立製作所の裁判で約一億六千三百万円の支払いを命じた。また二月二十四日には、人工甘味料特許で味の素に対し約一億九千万円の支払いを東京地裁が言い渡した。これまでの社内発明への対価からは想像を絶する高額の支払いである。そして、一月三十日の青色発光ダイオードに関する東京地裁の判決。日亜化学工業(徳島県阿南市)に対し、発明者、中村修二・米カリフォルニア州立大学サンタバーバラ校教授へ二百億円の支払いが命じられた。 三つの判決はまさに「研究者の夢」=「企業の悪夢」という流れ。なぜここまで高額の支払いが命じられるのか。たしかに、青色発光ダイオードの発明にわずか二万円の支払いしかなされていなかったことなど、これまで企業内発明に対する企業の対応には問題が多かった。しかし、現在の判決のその法理には問題はないのか。 一連の巨額発明料判決の基礎となっている判決がある。昨年四月の最高裁判決である。光ディスク読み取り装置に関するオリンパス光学工業の裁判。最高裁は企業が社内の発明報奨ルールに従い対価を支払っても、裁判所が安いと判断すれば増額できることを明確に打ち出したのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。