新たな主役の座を狙うタイとインド

執筆者:竹田いさみ2004年5月号

同心円状にビジネス帝国を拡大する野望を抱くタイのタクシン首相、好調な経済をテコに史上初めて東南アジアに目を向けたインド。主役を目ざす二国には、共通する利害もある。 現在、東南アジアで最も強力なリーダーシップを発揮しているのが、タイ王国のタクシン・シナワット首相だ。タイ北部のリゾート地チェンマイの空港に降り立つと、ターミナルビルの真正面に掲げられたタクシン首相の巨大な肖像画が眼に飛び込んでくる。プミポン国王の肖像画が掲げられることはあっても、首相の肖像画が登場することは今までなかった。タクシン首相の抱く野望は、この肖像画にも現れている。自らをCEO(最高経営責任者)に、タイ・ビジネス帝国を建設することだ。このため国王との不仲説も囁かれている。 タクシン首相の野望は、第一段階でインドシナ地域を舞台にタイ・ビジネス帝国を建設し、第二段階でその「帝国」を中核に、中国南部やインド東部をリンクさせたタイ・バーツ経済圏を構想することだ。常にニッチ(すき間)マーケットを探し求め、ビジネス帝国を建設することがタクシン戦略の真髄である。 同心円の中心にタクシンが鎮座し、周縁を形成する第一層(ミャンマー、ラオス、カンボジア)、第二層(ベトナム、マレーシアなど)、第三層(中国、インド)となる。日本は成熟したマーケットであり、ニッチではないゆえに、ビジネスのスピードも遅く、タクシンにとってあえて触手を伸ばす対象ではない。同心円の発想は、タイ・チュラロンコン大学のミヤ・タン博士との対話で生まれたものだ。

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