二〇〇四年三月期決算で日本企業として初めて純利益が一兆円を超えることが確実となったトヨタ自動車が、成長市場ロシアでの現地生産をためらっている。関係筋によると、ロシア進出に積極的な奥田碩会長(日本経団連会長)と、慎重論を展開する創業者一族との間で意見の相違があるようだ。 トヨタ車のロシアでの昨年の販売台数は前年比約三倍の二万六千四百七十二台で、今年は三万台を目指す。奥田会長は昨秋ロシア西部ニジニノブゴロドを訪問し、組み立て工場の候補地を視察。キリエンコ沿ボルガ連邦管区大統領全権代表とも会談した。視察の結果、労働者の質の低さが目についたものの、会長は日露両首脳の諮問機関「日露賢人会議」への参加を快諾するなどロシア市場に強い関心を寄せている。ロシア側もトヨタ進出にあたっては、「最大限、有利な条件を検討する」とラブコールを送る。 ところが、石橋を叩いて渡る社風を築いた豊田一族側は、「WTO(世界貿易機関)にも加盟していないロシアは、法整備も不十分で危ない」と主張。ロシア市場への大型投資は「もう少し台数が売れてから」(張富士夫社長)との社論が一応まとめられたという。

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