「陳水扁銃撃」にこれだけの謎

執筆者:2004年5月号

 台湾総統選の前日に発生した陳水扁総統銃撃事件をめぐりさまざまな憶測や噂が囁かれている。 当初から有力視されているのは、選挙賭博がらみの犯行だ。ヤミの選挙賭博では「連戦が五十万票前後の差で当選」に賭け金が集中。陳水扁勝利に賭ける客は少数で、オッズは高かった。選挙終了直後から陳水扁大逆転で儲けた客の存在に注目が集まっている。 一方、優勢を覆された連戦支持者を中心に「陳水扁陣営の自作自演説」もしくは「陳水扁の落選を恐れる勢力による陰謀説」も根強い。各種推計を総合すると、銃撃事件による同情票は少なくとも二十万票に上る(実際の得票差は三万弱)。 陳水扁氏らが防弾服や防弾仕様の車を使用していなかったことに加え、事件発生によって国家緊急事態が発令され、全面警戒態勢に駆り出された数万人の軍人・警官(国民党支持が多いとされる)が投票できなかったことから、軍人や警官を計画的に縛り付けたとの批判も後を絶たない。 真相究明は警察当局の捜査次第だが、米台北駐在代表部は二月段階の内部報告で「今回の選挙後、(1)選挙無効の訴え、(2)戒厳令、(3)暴動発生の三つの事態が懸念される」と指摘していた。このうちの(1)と(3)が的中。なぜ的中したのかも総統選をめぐる謎の一つだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。