カンボジアでは昨年七月の総選挙以降、フン・セン首相率いる人民党を軸とする連立交渉が合意直前で何度も頓挫。国会空転のあおりで、世界貿易機関(WTO)加盟を始め重要案件の審議ができない異常事態に陥っている。「国父」を自任するシアヌーク国王は、毎年この時期に療養先の北京から帰国してプノンペンの王宮で過ごしてきたが、「今年は連立政権樹立が一〇〇%確約されるまで帰国しない」と牽制。だが、国王の影響力低下を最もよく知るフン・セン首相は気に留める風もない。連立相手の王党派・フンシンペック党のラナリット党首が国王の子息という親の七光だけの人物で、党内での発言力が急低下しているためだ。 連立政権は今年前半までには樹立される公算が強まっている。ラナリット氏に下院議長ポストを与えて祭り上げ、既存の社会福祉省を分割して雇用対策や職業訓練など都市部住民の懐柔策を担う省庁を新設し、人民党がその閣僚ポストを押さえる「実質的な単独政権」戦略だ。剛腕フン・セン氏の勢いは止まりそうにない。

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