ほぼ二十年にも及ぶ紆余曲折の末、三月二十一日、インド政府は英BAEシステムズ社との間で覚え書きを取り交わした。同社製の新鋭練習機「ホーク」六十六機を総額十四億五千万ドルで購入するという契約で、当初、十六億三千万ドルの取引になると言われていたものだ。 この取引がなかなか合意に達しなかった背景には、競合する二国からの強い圧力があった。仏ダッソー社は「アルファジェット」を、ロシアは「ミグAT」の売り込み工作を続けてきたからである。フランスが脱落した時点でイギリスが優位に立ったが、今度はブラジルが割り込んできた。エンブラエル社の「AMX-T」はベネズエラ空軍でホークより高い評価を得ているうえ、価格も三〇%安いというのが売り文句だった。 決め手となったのは、四月のインド議会選挙のほんの数週間前に明らかにされたインド空軍の意向だ。世界第四位の規模を誇る空軍はBAEを支持した。このところインド空軍の主力機「ミグ21」が相次ぐ墜落事故を起こし、「空飛ぶ棺」という不気味なアダ名を奉じられていることが英露の勝敗を分けた。

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