産業界全体の情報の重心が、インターネットの「こちら側」から「あちら側」に移るとき、情報技術(IT)産業の覇権構造が変化する。それが前回の問題提起であった。 三月三十一日、グーグルはGメールという無償電子メールサービスへの参入を発表した。私はこれが今年第1四半期最大のニュースだと考えている。 グーグルは、電子メールを保存するスペースとして、ユーザー一人ずつに1ギガバイトという巨大ストレージを、インターネットの「あちら側」に無償で用意する。私たち一人一人がインターネットの「こちら側」(つまりPCのハードディスクの中)で保存している電子メールをすべて「あちら側」に移してしまおう、というのがグーグルの意図するところである。 マイクロソフトは、情報が「こちら側」に存在する限り、その情報(例、電子メール)を処理するためのソフト(例、アウトルック)で覇権を維持できる。一方グーグルは、「あちら側」にある厖大な情報を処理する検索エンジンという「情報発電所」を「あちら側」に作り上げてきた。よって、情報が「あちら側」に移りさえすれば、「情報発電所」の機能を増強することで、さまざまな新しいサービスを自在に付加できるのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。