世の中というのは、ひょんなことから一気に変わったりします。ホントに、ひょんなことからです。チョットしたテクノロジーの変化が、格調高い思想なんかより遥かに大きく世の中を変えちゃったりしますもんね。たとえば、女性解放。そりゃたしかに格調高い思想も女性解放に貢献はしてますよ。でも、全自動洗濯機や電子レンジや自動炊飯器の登場の方が遥かに貢献してると私は思いますけど。「フォーサイト」を読んでいる方々なら、こうした考えを少なくとも鼻であしらったりしないですよね。 では、私が大好きな野球が世の中を変えることがあるか? さすがに私も、そんなことはあるわきゃないと思ってました。なんたって、たかが野球ですからねぇ。でも、『マネー・ボール』(ランダムハウス講談社)を読み終えた今は違います。江川卓が言った通り、“たかが野球、されど野球”なんですよ。いや、“されど”どころの騒ぎじゃないです……。 ところで、私はトッテモ心配している。この本について、メチャクチャ面白い大リーグ本であるとか、野球に少しでも興味がある人は読んだ方がイイといった書評が出回るんだろうな、と。そして、そんな書評を鵜呑みにして、“面白い本は読みたいけど、今は仕事で忙しいからやめておこう。たかが野球なんだしさ”と考える人もいるだろうな、と。たしかに、この本は野球や大リーグについて書かれたノンフィクションの最高傑作だ。それは、野球本や大リーグ本のマニアである私も保証する。でも、この本は、世の中を一気に変える凄い力も持っているのだ。で、忙しくても読まないと大損するのに。

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